MOIZのBlog-的外れな指摘

アメリカ在住の日々の雑事を綴ります

2023年に聞いたオーディオブック

2022年末から2023年にかけて聞いたオーディオブックのなかから記憶に残った物

まずはフィクションから

Fairy Tale by Stephen King

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スティーブン・キング異世界転生もの(?)年老いた愛犬を救うためにおとぎ話のような世界に飛び込んだ少年の冒険譚。とはいえスティーブンキングだけに、ラノベのような都合のよい話ばかりではなく...。

単純に面白かった。アメリカで有名なおとぎ話が一部モチーフになっているのだが、残念ながら自分の知らない物で、あとから調べるはめになった。ここにそのおとぎ話のことを書きたいのだが、クライマックスのネタバレになりかねないのでやめておきます。*1

 

Remarkably Bright Creatures by Shelby Van Pelt

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水族館のタコと、水族館で働く身寄りの無い女性の意外な交流の話。何の気になしに聞き始めたが、予想外に引き込まれた。最後の最後、タイトル(「すばらしく賢い動物」)がうまく回収されてにやっとさせられる。

 

The Boys from Biloxi by John Grisham

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ジョン・グリシャムのサスペンス小説。英語でジョングリシャムを読むの(聞くのは?)初めてだったが、やはり面白い。

 

Where the Crawdads Sing by Delia Owens

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邦題:ザリガニたちの鳴くところ

最近映画にもなった有名作。主人公のカーヤがかわいそうすぎて読み進むのが大変だった。映画も見ようと思ったけれどあまり評判が良くないので未見。

 

Artemis by Andy Weir

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邦題: アルテミス

火星の人、プロジェクト・ヘイル・メアリーのアンディ・ウィアーの作品。プロジェクト・ヘイルメアリーが良すぎたので過去作から選んで聞いた。月面基地アルテミスと月開発を巡る事件。

最近、日本人も月面へ行く送る「アルテミス」計画についてニュースで目にして、この作品の事を思い出したが、関係はないようだ。アルテミスは月の女神なので、同じような名前になったのだろう。

 

つぎはノンフィクション

Going Infinite by Michael Lewis

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マイケルルイスがFTXとサム・バンクマン・フリードについて書いた話題作。サム・バンクマン・フリードの数奇な生涯と、FTX及びアラメダリサーチの隆盛と没落。とても現実とは思えない異様な話。

マイケル・ルイスの本はほぼ例外無しに面白いのだが、ときに面白すぎて困る。とくに、この本の大部分でサム・バンクマン・フリードを理解されない孤独な天才というイメージで描写しているのが気になった。面白い話が真実とは限らないと自分を戒めながら聞いた。

 

Software Engineering at Google by Titus Winters, Tom Manshreck, Hyrum Wright

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邦題: Googleのソフトウェアエンジニアリング

自分はGoogleではハードウェアエンジニアとして働いているのが、社内インフラは全社的なので、しょっちゅうソフトウェアエンジニアリングのツールのお世話になる。とはいえ、どうしてもソフトウェア・エンジニアほどその細部やルーツに精通しているわけではないので、この本で再履修できるのはありがたい。

実をいうと半分くらい聞いたところでお腹いっぱいになってしまい、まだ全部聞いていないのだがのこりはそのうち聞くつもり。

あ、あと、この本にでていることは社外に言ってもいいんだというのがわかってとても助かる。

 

Androids by Chet Haase

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これまたほぼグーグルの話。主にアンドロイドが表にでる前、1.0開発までの経緯を中心に、軽妙な語り口で開発の様子をまとめている。

著者自身アンドロイド開発に参加した技術者なので、技術的な部分がしっかりしているのがよかった。特に詳細を書いているという訳ではないのだが、専門外の作家の書いた本にありがちな首をかしげる記述がこの本ではみあたらなかった。

自分の仕事がアンドロイド向けハードウェアの開発なのもあって、読書としてとても面白かった。

 

Burn: New Research Blows the Lid Off How We Really Burn Calories, Lose Weight, and Stay Healthy by Herman Pontzer

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邦題: 運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」

人間の代謝と食事と運動の謎を解く話。SNSで紹介されているのを見て読み始めた。

運動しても痩せないが、運動しないと体にわるいという逃げ場のない話。

本で紹介されている狩猟採集民族のカロリー消費量が都会のオフィスワーカーと同じという話は以前サイエンティフィック・アメリカンで読んだ記憶があったが、著者をみたら同じ人だった。

www.scientificamerican.com

 

Chip War by  Chris Miller

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邦題: 半導体戦争

話題作。自分も半導体業界に身を置く物として、実に興味深く読んだ。示唆に富む良作。

ただ、あまりにも半導体の価値を大きく見過ぎではないだろうか。もちろん半導体は国際政治上の意味を含めて現代における最も重要な産業の「一つ」だが、半導体だけがすべてを決定づけるわけではない。

なんにせよ、台湾有事の事態になったら、イスラエルの情勢があっかしたら、などいろいろ考えさせらる本だった。

日本に行ってきた

2022年12月から2023年1月にかけて家族で日本に行ってきました。

渋谷のビルからとった町並み

 

4年ぶりにおとずれた東京の感想(裏付けのない個人的な感想です)

- 4年前に来たときにくらべそんなに変わってはいない気がする。とはいえ、局所的には大きく変わった所もある(渋谷とか)

- 東京はやはり楽しい。東京の中の一つ一つの街がアメリカの大都市並のサイズがあり、しかも特色豊か。毎日街をあるいているだけでとても楽しい。そりゃ観光客もくるよね

- 食べ物が安い。牛丼チェーンの朝メニューが安いのに驚いた。老舗のカツカレーが560円とかどういうからくりですか?

- 外国人観光客が増えた。ホテルで聞こえてくるのは大概日本語以外の言語だった

- そのわりに、海外からの客が使えないサービスが多い。たとえばタクシーアプリは日本の携帯電話が必要なものがほとんど。キャッシュレス支払いアプリは日本の携帯番号がないと全滅。海外からの客が使いやすいキャッシュレス支払いといえば、SUICAくらいですかね。iPhoneユーザーならモバイルSuicaにしてクジットカードからチャージできると聞きましたが、自分のスマホは対応していないので現金でチャージしていました

- グローバルチェーンのサービス(オンライン注文や予約)なども、日本は別アプリ・サービスというのが多くて面倒臭い。たとえばスタバで注文するにも、アメリカとは別。統合できないものか

- 免税店での買い物が少し楽になっていた。パスポートにレシートを張る必要がなく、すべてオンラインとのこと。(せっかく楽になっても、2023年から一時帰国時に使うハードルがかなり上がってしまうので、恩恵にあずかるのは今回が最後になりそうですが)

- 東京は狭い。観光で来るのには最高なんだが、長くは住めないなあ。でもまた遊びに来たい

- アメリカに日本のコンビニ持ってきたい

初詣客で賑わう神田明神の参道

 

あと東京を訪れる前の事ですが、アメリカ暮らしの方が長い家族が日本の鉄道網の優秀さに感心していました。降雪の関係で新幹線が不通になったものの、新幹線が他の路線を乗り換え駅まで進み、迂回乗り換えを指示されたそうですが、その際の各駅の連絡が完璧だったそうです。迂回路から遙かに離れた小さな目的駅で切符を出した瞬間に、駅員が「迂回の方ですね」と案内してくれたそうで、連絡の良さに驚いたそうです。

アメリカだったら自分が事情を説明する羽目になり、それでも話が通じないという事になるでしょう。絶対なる。

本文とは特に関係の無い鉄道の写真

 

 

瞳を閉じて、老眼対策

アメリカでVuityという老眼対策薬が承認されたというニュースが話題になりました。

www.vuity.com

私のツイッターのTLでも紹介している方がいました。

処方箋が必要だが保険はきかない、ということで薬局の店頭で買える目薬のようには気軽には使えませんが、点眼するだけで老眼対策ができるというのは魅力的です。

仕組みは薬の効果で瞳孔(瞳)を小さくすることで、焦点のあう距離を広げ、老眼の人でも比較的近くまで見えるようにするという事だそうです。Vuityのホームページには"VUITY™ primarily works by reducing your pupil size to help you see up close."と書いてあります。眼科で瞳孔を開く薬が処方されると目の焦点が合いにくくなりますが、その逆の作用があるということでしょうか。使用上の注意としては、暗い所で見えにくくなる事が述べられています。これも瞳孔を開く薬の注意点とちょうど真逆ですね。

薬によって「瞳を閉じて」みると、老眼対策になるわけです。

と、ここまで調べて気がついたのですが、瞳孔を狭めて見える範囲を増やすというのは、まさにカメラで絞り(Iris=瞳)を小さくして被写界深度を広げるのと同じ行為です。カメラの被写界深度は絞りを絞るほどほど広がるので、Vuityを使用するのはカメラのF値を大きくするのに対応すると考えると、見える範囲が広がることも暗い所で見えにくくなる事も理解できます。(絞りを絞ると透過する光の量が小さくなるので、撮影される画像は暗くなる) 

同じように考えると、明るいところで老眼の人でも比較的楽に近くの物が見える現象も理解できます。周りが明るいと人間の目は瞳孔を縮めて目に入ってくる光の量を調整します。すると絞りが小さくなり、被写界深度が広がるわけです。明るさと人間の目の焦点の関係がいままでピンときていなかったのですが、カメラの動作と関連付けると理解できるようになりました。

さらにもう一つ、逆に瞳孔を広げる状況を考えてみます。人間の目は、自分の興味のある物・人を見るときは無意識に瞳孔が広がるそうです。つまり、好きな物を見ると、絞りは広がり、被写界深度は狭くなり、対象以外の物はぼけて見えやすくなるわけです。何か興味のある物を見ているときに他の物が目に入らない、自分が好きな人が視界にあると他の人の事は見えない、という現象は、脳内だけでは無く目の中でも起きているのかもしれません。ついでにいうと、カメラでF値を小さくして対象以外をぼけさせるいわゆるボケ表現は、こういった恋する人物の見え方をシミュレートしているのかななどと考えてしまいます。

 

 

 

 

WH-1000MX5が届いた

予約していたWH-1000MX5が届きました。

WH-1000MX5包装

アメリカの発売の方が日本より早いようなので、お披露目。

WH-1000MX5、本体

(ようは見せびらかしたいわけですが...。)

専用ケース

音質もノイズキャンセリングも良い感じです。

Boseからの買い替えなので、操作にはなれるのに少しかかりそうです。

あとはバッテリーの持ちを使いながら確認していこうと思います。

 

Steam Deckが届いた


去年予約していたSteam Deckがとうとう届きました。

Steam Deck

予約が始まったのが昨年七月。元々の予定では昨年中に出荷のはずでしたが、出荷開始が2月にずれこみ、私の順番に届くまでに更に3ヶ月ということで、届いたのは5月半ば。10ヶ月かかってしまいました。

驚いたのが日本未発売にもかかわらずOS側、ゲーム側ともに日本語の対応が意外とこなれていることです。このあたり、Steam OS自体の多言語対応がすすんでいる事を反映しているのでしょうか。

日本語設定可能

ゲームもタイトルによっては日本語対応

本体自体をちょっと触ってみた感想としては、

  • 大きいと聞いてはいたが、自分的には予想通り
  • でも手に持って遊ぶと重さがずっしりくる
  • ファンがちょっとうるさい

という感じでしょうか。

 

ゲームによってはSteam Deckの操作系に完全には対応していないようすなのが気になりますが、そのあたりもタッチパネルやパッドを駆使すればなんとかなるようです。

Steam Deckはデスクトップモードもあり(電源ボタン長押しで切り替えメニュー表示)、このモードではChromeなどのLinuxアプリケーションも動作します。このモードでPC用のモニターにUSB-Cで接続してみましたが、モニターにUSB接続したマウスやキーボードも認識されました。うまく設定すれば日本語入力もできそうです。

デスクトップモード(電源ボタン長押しから選択)

おそらくSteam Deckの一番の売りは、エルデンリングのようなPC向けの最新AAAタイトルがハンドヘルド機で遊べる、ということなのでしょうが、ちょっとそこまでのパワーはないのかな?という気がしますす。あと、画面サイズ的にストラテジックゲームは辛そうです。外付けモニターに繋げればいいのでしょうが、それならPCで良さそうですし。

 

自分的にはちょっと前のAAAタイトルを遊ぶのにちょうど良いのではないかと期待しています。ちょうどPS5のエルデンリングをエンディングまで進めたところなので、次はSteam Deckで、積んでいたゲームでも遊んでみようかなと思います。(Fall Out4とか)

Steam DeckでFall Out4



 

2021に読んだ本

2021に読んだ本

2021年に読んだ本の中で印象に残ったものをマンガなどを中心につらつらと思いつくままに。2021年に読んだというだけで、出版が2021年とは限りません。

マンガ

まずはマンガから。辛いときにマンガはいい。

ドラマにもなった「ハコヅメ」の、普段とはうって代わったシリアスな別章。

「くノ一」捜査官黒田カナの関わった事件が連載とは違った陰鬱なトーンで描かれる。連載でも読んだが単行本で読み返し打ちのめされた。凄惨な事件の捜査やカナの苦悩が、同僚達との濃密な関わりや過去のいきさつなどを含めて丁寧に描写されている。特に過去エピソードとの関連は、作者のインタビューなどを読む限り、連載時から考えられていたものと予想され、普段の楽しいハコヅメの底に潜む闇の深さに慄然とする。

とにかくすさまじい作品だ。映画化して欲しい。

 

タイトル通り、若くして大腸癌になったひるなま氏の闘病記。がんが発見されて治療し退院するまでを当事者のめから、実に克明に記録している。

自分も今年は大腸癌の治療を受けたため、とてもとても興味深く読ませていただいた。辛いときに同じような境遇の人の話を読むというのは、くらべてどうこういう訳ではなく、それだけで励みになるものなのだ。

ひるなま氏の今後の良い経過を願っています。

 

人類が一度滅びかけた後の復興した後の場末の立ち飲み屋を舞台にした、なんだか良い感じのSFまんが。日本に帰ったらこんな感じの立ち飲み屋に通ってみたいものだと思う。(自分は今は酒をのまないのだが)。

ただ怪生物に襲われるのはいやだ。

 

タイトルそのまま邦画をプレゼンする女子高生のまんが。何故かいたくツボにハマってしまった。紹介される映画の多くはあまりにも奇想天外で、こんな映画本当にあるのかい?とも思ったが、自分が見たことのある作品(例えばバーフバリ)は漫画の通りだったので、全部本当にある映画なのだろう。この漫画を読んで実際に映画を見てみた物も、コクソンなど何個かある。

今年は特に池ちゃんがバズったのも記憶に新しいところ。考えてみたらこのブログも池ちゃん味がある。

 

子供の頃断片的に見た事はあるのだが通しで読んだ事はなかったので、キンドルのセールを機会に購入。タイムパトロールに巻き込まれることになった平凡なしょうねんボンとその相棒兼指導者リームの冒険。藤子不二雄F氏のSF作品群にもつらなるセンスオブワンダーと主人公二人の爽やかな関係が心地よい。

あと、エイシャ錠と圧縮学習機が欲しいです。

 

表紙見てまさかギャグ漫画だとは思わなかった。一見普通の先生同士や生徒とのやりとりが、なんとも面白い。

 

孤独のグルメの原作、1は大分前に読んだが、2が出ているのを最近初めて知って読んでみた。辛いときにはなぜか人が飯を食っている姿が気持ちを紛らわせてくれる。今年はずっと孤独のグルメのドラマ版や食べ物系YouTube動画を見ていた。

 

マンガ以外の書籍類

 

とにかく面白かった!

発売されたばかりということもありあまり内容に踏み込みたくないのだが、ミステリー的な展開から、クライシス物、ファーストコンタクトSF物を経てブロマンス物へと移り変わるSFの楽しさてんこ盛り。

映画化も進んでいると言うことで楽しみだ。自分は英語のオーディオブック版を買ったところ、オーデイォブックならではの演出があってなかなかよかったが、映画ではこのあたりさらに差別化できるのだろう。

 

 

今頃読んだ。こちらもネタバレしたくないのであまり内容を語りたくないのだが、自分は半分くらいまでフムフムと読み進んだところで本が手放せなくなり残りは最後まで一気に終わらせてしまった。

 

ten.tokyo-shoseki.co.jp 

高校の生物基礎の教科書。生物学というのはずいぶんと進歩の早い分野らしく、自分が高校生の頃と大分内容が変わっているようだ。というかその前に自分は高校レベルの生物学を碌に知らないのだと言うことが良くわかった。

例えば数年前の自分に「地球の生物を大きく3つに分けると何と何と何?」とか聞いたらおそらく「え?菌と植物と動物?」とか間抜けな事を答えていたに違いない。答えは「細菌と真核生物とアーキア」だ、たぶん。自分はこんな基礎的な事さえしらなかった。

もう少し発展した内容の、「生物」(東京書籍)も買ってあるのでいずれ読んでみるつもり。

 

がんの発生の原因をDNAの破壊などのレベルから解説してくれている。自分の体に何が起こったのかを理解する上でとても役にたった。

 

この本を読んでインターバルウォーキングを始めた。この本によると普通のウォーキングはやるだけ無駄。運動は最大心拍数の60%に達しないと健康に対する効果はないそうだ。そしてこの効果をもっとも効率的に実現する手段がインターバルウォーキングなのだと。

あっさり信じる気になったのは、自分が参加した「prehabilitation」という手術前に体力を鍛えておくプログラムの中にインターバルウォーキングが入っていたという面もある。あとは研究者が書いた本らしく、効果のエビデンスがリファレンス付きで紹介されているのも説得力をます。

この本を読んで以来他の運動をやっていても常に心拍数を気にし、60%を超える強度になっているかを確かめるようになった。

 

 

マンガ区分にいれるべきなのだろうが、雰囲気的にこちらに分類。ダイヤモンド誌の記事でも解説され話題になった疲労物質とそのマーカー(ヘルペスウィルス)について、その発見者の近藤教授によってやさしく解説されている(画はにしかわたく氏)。

結局疲れたら休むしかないのだよね。

 

非常に基本的な個人向けファイナンスの基礎について解説した本。

あたりまえの事しかかいてないのだが、それでさえ自分には知らないことあやふやなことだらけだった。

 

大学の頃に学んだ線形代数の復習に読んだ。とてもわかりやすく丁寧に説明してある。学生の頃こんな本があればもっと良く理解できたのにと、自分の努力不足を棚にあげてついつい思ってしまった。

 

「集合と位相」の数学史。抽象的でわかりにくい集合と位相が数学史の中でいかに重要な位置を占めるようになったのか、歴史的な経緯を順を追って数学的な解説を伴って説明している。読み終わって、なるほど集合と位相は重要だ、と納得いった。

また集合と位相を再勉強したくなった。

 

ブログで感想を書いた。自分にとってのディストピア小説の完全形。

 

こちらもブログで触れた。今の世の中は生物としての人類にはいろいろ大変らしい。運動しよう。

 

 

寓話的な華氏451度と、警告の書的な一九八四年と

デストピア小説として最も有名な小説二つ、華氏451度(レイ・ブラッドベリ、伊藤典夫訳、早川書房)一九八四年(ジョージ・オーウェル、高橋和久訳、ハヤカワepi文庫)を続けて読んだ。

あまりにも有名すぎて読んでいないのと言うのがはばかられるほどだが、一九八四年の訳者後書きによると「英国 での「 読んだふり本」第一位がオーウェル の『一九八四年』だというのである。」ということなので、そういう人は多いのだろう。おそらく華氏451度も似たような状況だろう。最近100分de名著で華氏451度がとりあげられているのを見て、良い機会だからとKindle積ん読しておいたこの二つの本を続けてよんでみた。(読み終わったあとで100分で名著も見てみました。)

両者とも同様に有名な小説だが、読んでみた印象は大分違う。

華氏451度の方の主題は、デストピアに暮らす主人公ガイ・モンターグの疑問、成長、そして目覚めが主題で、デストピア世界の描写は部分的だしずいぶんと不完全だ。本が禁止され燃やされる世界だが印刷物は流通しているし、本を見つけて焼却処分する「昇火士」という仕事もずいぶん戯画的だ。また、この世界が行っている戦争の描写もほとんどなく、出てくるテクノロジー(血液の完全入れ替え、完全な記憶をもたらす薬、など)もSFというよりは魔法のような描かれ方をしているなど、ディテールにはあまりフォーカスされていないようだ。それに比べて主人公とまわりの人間との関わりや、本人の成長が詳しく描かれている。デストピア社会は舞台設定で、そこで主人公が何を読み取っていくかという方が主題なのだろう。そういう意味でこれは寓話的な小説であると感じた。

対して一九八四年は、多くの人が持つデストピア小説のイメージ通りの作品だった。小説としてはもちろん主人公ウィンストン・スミスとその周りの人たちを中心に進むのだが、この世界がどのような仕組みで成り立っているかの説明にも十分にページを費やしている。それどころか、この世界の新言語「ニュースピーク」の説明に付録一章を与えているほどだ。主人公の仕事も真理省記録局という、過去の記録を改ざんする省庁の官僚という、デストピアなら実際にありそうな職業だ。また、権力がどのようなこの社会を維持しているか、国が他の国とどのように均衡状態を維持しているかについても説得力をもって描写している。この本が書かれた当時ならどうしてもソ連や東側諸国の事を思い出しただろうし、現代にすむ自分にはどうしても北朝鮮や中国の事を思い出されてしまう。おそらくジョージ・オーウェルは、たんなるおとぎ話ではなく、現実的な警告の書としてこの本を書いたのだろう。主人公の内面の変化もデストピアを描く小道具の一つ、という印象を受けた。

このような主題の違いからか、絶望の中に希望を見いだす華氏451度と比べて、一九八四年はなんの希望も明るさもない100%のディストピア小説だ。自分の好みとしては一九八四年の精緻さが好きなのだが、華氏451度の人間の描かれ方を好む人もいるだろう。

この二つの小説は映画化もされている。華氏451度は1966年にフランソワ・トリュフォー監督によって、一九八四年はずばり1984年にマイケル・ラドフォード監督によって。(華氏451度は2019年にマイケル・B・ジョーダン主演で再映画化されたようだが未見)

古い映画ではあるが、華氏451度の方は、昇火士の仕事の(映画の中で意図された)滑稽さが際立っていた。隊長が講演で子供が本を持っていないかいちいち検分するシーンなど妙に頭に残っている。ただ特殊効果のシーンなどどうしても古さを感じてしまう。

一九八四年の方はまっとうなデストピア映画。ほぼ小説通りの世界とストーリーが再現されている。

最後に、ブログ・タイトル通り的外れな指摘をしておくと、華氏451度の中で一番驚いたのは「ヴァニラ・タピオカ」が出てくる事だ。そのころからタピオカあったんだ!

 

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